2021年7月に行われた第44回世界遺産委員会に於いて、ジョージアならびにコーカサス初の世界『自然』遺産として登録された、≪コルキスの雨林・湿地群≫。


ジョージア西部にあるアジャリア自治共和国のムティララ国立公園、キントリシ厳正自然保護区、キントリシ国立公園、コブレティ厳正自然保護区と、グリア州、サメグレロ=ゼモ・スヴァネティ州にまたがるコルケティ国立公園の5か所の中の7つの核心地域から構成されています。

これらの地域は、黒海の東岸に沿って80kmに及ぶ回廊にある、温暖で非常に湿度の高い場所で、海抜0~2,500mに渡ります
主要な生態系には、古代より続く落葉性雨林と湿地、泥炭地があります。
年間平均降水量も1,500~2,500mm程度と多雨で、多いところでは4,000mmを超えることもあります。

非常に湿度の高い広葉雨林には、極めて様々な動植物が存在しています。
固有種がとても高い密度で生息し、第三期氷河時代を生き抜いた、かなりの数の世界的に絶滅の恐れのある固有種も生息しています。

コルキスの雨林・湿地群には、44の危険にさらされている維管束植物を含む約1,100種の維管束・非維管束植物、およそ500種の脊椎動物と多数の非脊椎動物がいます。
さらにこの場所は、特に絶滅の危機に瀕しているコルキス・チョウザメを含む19種の水生動物が生息しています。
また、鳥類にとっても最重要な、渡りの中継地『バトゥミのボトルネック』があります。

まだまだ露出の少ない地域ですが、ぜひ一度足を運んでみてはどうでしょうか?
現地での楽しみ方を簡単にご紹介しますので、ジョージアにお越しの際にはご検討&お問い合わせください。

ムティララ国立公園

【位置】
ムティララ国立公園は、ジョージア南西部に位置するアジャリア自治共和国内にある国立公園で、小コーカサス山脈の西部にあります。
年間4,250mmに及ぶ降水量の為、非常に湿度の高い場所です。
隣接してキントリシ国立公園があります。

【動植物】
公園の植生は、コルキス地域の落葉混交原生雨林から成っていてます。
ヨーロッパグリ、コーカサスブナ、シャクナゲの仲間(Rhododendron ponticum)、セイヨウバクチノキ、コルキスツゲが見られ、様々つる性植物が下草として生えています。

動物では、ヒグマやノロジカ、イノシシ、ヒメクマタカ、ワシミミズク、コウライウグイスの住処となっています。
両生・爬虫類ではコーカサスサラマンダー、コーカサスヒキガエル、キスジクサリヘビが見られます。

【楽しみ方】
1~2日のハイキングホーストレッキングバードウォッチング(観察施設あり)が楽しめます。
よりアクティブさを求めるのであれば、国立公園唯一のジップライン(220m)もあります。
公園内には山小屋もあり、宿泊できます。

コルケティ国立公園

【位置】
別名❝ジョージアのアマゾン❞とも言われるコルケティ国立公園は、ジョージア西部に位置するコルキス沖積平野にあります。
公園は1998年に設置され、黒海東岸からパリアストミ湖流域を含んでいます。
1,000万年前にユーラシア大陸に存在した熱帯・亜熱帯の生態系の名残であるコルキス湿原(ドーム状で周囲よりも高い土地に位置し、大部分の水・栄養を降水から得ている降水栄養性泥炭地)が公園内に存在します。
ラムサール条約登録地で、晩春と初秋には多くの渡り鳥が見られます。
パリアストミ湖は黒海から砂丘によって隔てられ、ピチョリ川によって淡水化された汽水域で、水深が3mあります。

【動植物】
公園の植生の多様さは、園内にある3つの異なる生態系(沼地、砂丘、水域)の影響によるものです。
この独自性のお陰で、ジョージアの他の地域では見られない植物が育まれています。
例えば3種のミズゴケ、モウセンゴケ、スゲの仲間(Carex lasiocarpa)が見られ、雨林地域ではヨーロッパハンノキ、コーカサスサワグルミの仲間、ヨーロッパナラの仲間、コルシカキヅタ、砂丘地域ではサジー(シーバックソーン)、セイヨウハマナツメが見られます
ジョージアのレッドデータブックにリスト化されているものもあります。

動物の多様性も同様に独特なものがあります。
公園は多くの渡り鳥にとっての中継地点ですが、一部の渡り鳥にとっては越冬地となっています。
ヤマシギ、ダイシャクシギ、キンクロハジロ、マガン、オオハクチョウ、コブハクチョウ、ニシハイイロペリカン、ワシの仲間(Clanga clanga)、コウライキジがすみかとしています。
哺乳類では、キンイロジャッカル、イノシシ、ノロジカ、ユーラシアカワウソが見られ、ヒトイロハリネズミやコーカサスモグラなどの16種は固有種です。
爬虫類にはヨーロッパヌマガメ、イモリ、ナミヘビの仲間(Dolichophis caspius)があり、アマガエルの仲間も公園に住んでいます。

【楽しみ方】
ボートツアー(平底船、モーターボート、カヤック)、バードウォッチング(観察施設あり)、フライフィッシングが楽しめます。
また、海では運が良ければイルカを見られるかもしれません。
公園内にはビジターセンターやホテルがあります。