ウズベキスタンやタジキスタンに伝わる、刺繍入りの飾り布・スザニ。

18世紀末から19世紀初頭が起源とされていますが、諸説あり、さらに古い時代からつくられていた説もあります。

元来は嫁入り道具の一つで、女性はお嫁に行くまでにたくさんの飾り布を仕立てておく必要がありました。家族に女の子が生まれると、絹や木綿の布地、刺繍糸などの材料を買い集め、飾り布を仕立てる準備が始まります。そして娘は、母や祖母から家庭に伝わる模様とともに刺繍の縫い方を教わり、コツコツと結婚に備えました。

スザニとは、主に布団の覆い掛けに使われる大判の飾り布のこと。スザニという言葉は、ペルシャ語の「針」が語源とされています。小ぶりの飾り布は”パノ”と呼ばれ、壁飾りや風呂敷、お祈りの時間の敷布などに使われました。

ソ連時代には、民族文化がタブー視されたことで、スザニを仕立てる習慣も廃れました。しかしソ連崩壊後は、欧州を中心にその価値が認められ、復活を遂げます。地方ごとに色合いや定番のモチーフが異なり、各模様にはさまざまな意味が込められています。

ソ連崩壊後は貴重なスザニが海外へ流出したため、制作から50年以上が経過したアンティーク・スザニの持ち出しには、規制がかかっています。つくられて日の浅いスザニに関しては、持ち出しに特別な許可は必要ありません。