2021年7月の第44回世界遺産委員会で新たにロシアの世界遺産に加わった≪オネガ湖と白海の岩絵群≫。
カレリア共和国のプドジュスキー地区とベロモルスキー地区に分かれて登録されています。
これらの地域に新石器時代(約6,000~7,000年前)には人類が定住していたことを示す貴重な資料です。
また、先史時代に描かれた芸術作品の中で、世界的に最も規模が大きい部類に入り、かつ集中しているのが特徴です。
岩絵には当時の神話や信仰、狩猟採集生活や日々の活動様式が描かれています。
白鳥と思しき鳥や森の動物たち、人間や小舟がモチーフとなっています。
オネガ湖の岩絵群
オネガ湖の岩絵群は湖の東岸に位置するコチコフナヴォロク(Кочковнаволок)半島からガジー・ノス(Гажий Нос)岬のやや南方に掛けて、南北約18.5kmに渡って点在しています。
また、湖に浮かぶいくつかの島々、ボリショイ・ゴリェツ(Большой Голец)島やミハイロヴェツ(Михайловец)島など、にも痕跡が残されています。
オネガ湖の岩絵群は、17の岬と6の島にまたがって存在しています。
25のグループに分類され、1,200ヵ所以上描かれており、大きいもので約4m程のサイズになります。
岩絵はなだらかな岩に1~4mmの深さで彫られており、湖面から2.5m程の高さにあります。
ベゾス・ノス(Бесов Нос)岬には神秘的な3つの絵があります。
≪悪魔≫、≪なまず≫、そして≪カワウソ≫です。
伝説によると、15世紀にムロムスキー修道院の僧侶が『悪霊を追い払うため』に十字架をこれら3つの絵に掲げたそうです。
アクセスの拠点になるのはプドシュの街。
そこから本来は岬まで車で行けるのですが、川に架かる橋が崩落している為、ボートでのエントリーになります。
白海の岩絵群
白海の岩絵群はヴイグ川河口に位置する大小の島々に点在し、11のグループに分類され、3,400ヵ所以上描かれています。
人間、動物、シカや海獣の狩猟シーン、戦い、そして儀式の様子が見て取れます。
緩衝地帯を含めてもわずか562ヘクタールの狭い地域に密集しているのが特徴です。
オネガ湖の岩絵群は核心地帯だけで6,944ヘクタールありますので、密度の高さが良く分かります。
絵の大きさは小さいものは3cm、大きいものは3m程になりますが、大部分は15~60cm程度となっています。
岩絵以外にも付近からは石器や陶器のかけら、鉄製品、琥珀の宝飾品なども出土しています。
アクセスの拠点になるのはベロモルスクの街。
街から約5km程車を走らせ、さらに約1.3km森の中を歩くとたどり着きます。
2020年には道路補修や橋の建設といったインフラや、カフェ、土産店、休憩所の整備に予算が割り当てられました。
また、別の場所には「悪魔の足跡」と呼ばれる8つのはだしの足跡が残っています。
世界に見る岩絵
岩絵は人類史の解明にとても重要なものです。
世界的に見ても数多くの岩絵が世界遺産に登録されています。下記以外にも洞窟や岩のくぼ地などに描かれているものもあります。
スペイン
コア渓谷とシエガ・ヴェルデの先史時代のロックアート遺跡群(ポルトガルと共同)
イベリア半島の地中海入り江のロック・アート
スウェーデン
タヌムの線刻画群
ノルウェー
アルタのロック・アート
イタリア
ヴァルカモニカの岩絵群
アゼルバイジャン
ゴブスタンのロック・アートと文化的景観
カザフスタン
タムガリの考古的景観にある岩絵群
サウジアラビア
サウジアラビアのハイール地方のロック・アート
中国
左江花山のロック・アートの文化的景観
タンザニア
コンドア・ロック-アート遺跡群
ロシアでは他にもハバロフスク近郊の少数民族ナナイが多く住むシカチ・アリャン村の岩絵群がロシアの世界遺産暫定リストに登録されています。
今までほとんどクローズアップされてこなかった場所を訪れてみませんか?
オネガ湖には木造建築で有名な世界遺産キジー島がありますし、白海にはロシア正教の修道院群で有名なソロヴェツキー諸島があります。
併せて周遊するのもおすすめですよ。
ぜひともご相談くださいね♪