1961年4月12日。この日はロシア人にとって、誇るべき日です。そして、世界にとっても歴史的に重要な日でもあります。

この日にガガーリンが初の有人宇宙飛行を成功させてから、今年で60年が経ちました。その記念すべきこの日に、ガガーリン縁の地を訪ねました。

ガガーリン市には、もちろんガガーリンを記念する博物館や、ガガーリンや両親が住んでいた家など、色々な見どころがコンパクトにまとまっています。

今回は、記念日のイベントを含めてご紹介いたします。

 

ガガーリン駅

ガガーリン駅と特急列車ラスタチカ

ガガーリン市はモスクワ近郊の町で、旧名はグジャーツク市です。この近郊で生まれ育ったガガーリンにちなんで1968年にガガーリン市と改名されました。

モスクワ ベラルースカヤ駅から特急で約2時間。黄色が鮮やかなガガーリン駅に到着。60周年記念に合わせて、きれいに改装され、風船や花で飾り付けられていました。

駅構内のガガーリン像

駅構内には、もちろんガガーリン像。駅に到着したとき、このガガーリン像の前でイベントを行う準備をしていました。60周年記念、駅改装記念のイベントとのことでした。

待合ロビーの壁画

ミニ宇宙博物館

駅構内に入ると、真新しい匂い。待合ロビー、カフェ、ミニ博物館があります。

待合ロビーの壁にはガガーリンの宇宙飛行に関する壁画、ミニ博物館にもガガーリンの経歴や宇宙飛行船ボストークの模型などが展示されているので、電車を待つ間にも宇宙に触れることができて楽しいです。

全てが新しく、トイレもきれいで過ごしやすい駅です。

 

ガガーリン記念運動会

学校対抗の運動会

ガガーリン市に着いて、まずイベントの確認をしようと町をぐるっと回りました。(インターネットでは詳しい情報がわからないのと、意外と間違っていることがあるので…)

小さな町だし、散歩しながら博物館にイベント確認してまわることに。

すると、子供たちの運動会に遭遇。色々な道具を使った競争をしていたのですが、懐かしの竹馬もあって、万国共通なんだなあと思って微笑ましく観覧しました。

練習の成果が感じられる学生のダンス

ガガーリン像がある中央広場

駅のイベントを見に行こうと歩いていたら、中央広場に人だかりが。学生達がズラッと並んで何やら始まりそうなので、急遽予定を変更してこちらのイベントをみることに。

12時になる頃、広場の向こうから子供達がガガーリンの写真のプラカードや旗を掲げながら広場に入ってきました。そして、待機していた学生達のダンスが始まりました。ダンスが終わると、市長や要人らのスピーチがあり、表彰式が始まりました。

衣装が可愛いグループ

写真のように衣装を工夫しているグループもありました。元オリンピック選手や世界初の女性宇宙飛行士 ワレンチナ・テレシコワ氏の姪、ミュージシャン、舞台監督など、色々な著名人がプレゼンテーターをしていました。

色々な名目の賞があって、順位が低くても、「最優秀ユニーク賞」などなど、おそらく全グループが何かしらの賞をもらっていたみたいですね。グループと個人のダブル受賞をしている子もいました。

コロナの影響で、子供達も窮屈な生活をしていたと思いますが、この日はみんな生き生きしていて、舞台監督がスピーチで「皆さん、夢を見るのは好きですか!?」と聞くと、一斉に「はい、大好きです!!!」と元気に答えているのが印象的でした。

 

宇宙初飛行記念博物館 Музей первого полета

中央広場から5分ほど歩くと、宇宙初飛行記念博物館があります。

こちらのイベントを朝1番で確認に行くと、レクチャーがあるというので時間をたずねると、「ちょっとわからないな、チケット売り場で聞いて」と言われたので、聞きに行くと、「わからないわ、あっちの彼に聞いて」と…。ロシアではよくあることですね。

「あの人があなたに聞いてって言ってますよ」と言うと、奥の詳しい人に確認にいってくれました。そしてその時間に行ったら既に始まっていました…。(これもありがちです…)

イリーナさんのレクチャー風景

イリーナ・パヴロヴナ・ポノマリョーヴァさん(右側 黒い洋服)のレクチャーには、学生を含め、色々な世代の人が集まっていました。イリーナさんの隣にいらっしゃるのは、ガガーリンの長女 エレーナ・ユーリエヴナ・ガガーリナさんです!お二人共、品が良くて優しそうでステキでした。

イリーナさんは、ロシア連邦国家科学センター「生物医学問題研究所」の主任研究員とし尽力されました。ガガーリンの初宇宙飛行の準備期間に、国防省の航空宇宙医学研究所でキャリアをスタートさせたという貴重な経験を持つ方です。

研究やトレーニング、ガガーリンとの関わりなどについて、レクチャーをしてくださいました。(終盤になって参加したのでほとんど聞けなかったのですが…)参加者は興味深く尊敬の眼差しで聞き入っていました。レクチャー終了後は、順番に記念写真を撮っていたので、私もお願いしました。日本から来たことを伝えると、「あらあら、初めての経験だわ」と、快く一緒に撮ってくださいました。

飛行前訓練室

レクチャーを聞いてから、博物館を見学。60周年記念で博物館も混み合うかと思いきや、そうでもなく、ゆっくり見学することができました。小さい町ですし、レクチャーに集まった人達はもう以前から何度も見学しているんでしょうね。

1階には、宇宙飛行士の飛行前訓練に使った施設があり、中に入ってみることができます。その他、ボストークのエンジンの展示や管制塔も見学することができますよ。

ボストークのエンジン

管制塔のコントロールシステム

壁いっぱいに並んでいる管制塔のコントロールシステムをまじまじと見学していると、後から博物館スタッフのお兄さんが真顔で、「ここ押してみて」とボタンを指差しました。

「ここ?」と聞いて押して上の画面を見ると、ボストークが炎を上げて宇宙へ旅立ちました!「おお!」と喜ぶ私を見て、ついに笑顔が出るお兄さん。余韻もそこそこに、また真顔で「あそこから2階へどうぞ」と言い残し、持ち場に戻っていきました…。

もしこの博物館に立ち寄ったら、ぜひロケットを発射させてみてください!

宇宙飛行ロケット ボストーク の発射ボタン

ボストークが飛び立つ映像

ロケット開発指導者 セルゲイ・パヴロヴィッチ・コロリョフのデスク

2階の展示フロアには、世界初の宇宙飛行に関わった人々の経歴、実際に彼らが使っていた道具や仕事場の様子、ロケットの模型やパラシュートなどの展示があります。ロケット開発指導者のコロリョフのデスクには、手書きのプランなども残されていてとても興味深いです。中にはSONYからガガーリンに贈られた無線機もありましたよ。

展示室の中央部分には、宇宙空間について調べられるコンピューターシステムがいくつか設置してあり、ロシアの子供達が博物館のスタッフに教えてもらいながら体験していました。

2階展示室中央

宇宙飛行ロケットの模型

ガガーリンのSONY無線受信機

宇宙飛行士帰還用パラシュート

1階に戻ると、チケット売り場兼ミュージアムショップの近くにもうひと部屋あることに気がつきました。

そこは、宇宙飛行実験に貢献してくれた犬達についての展示でした。無事に生還するケースがほとんどだったのですが、有名なライカ犬については始めから帰還する可能性は無い計画だったり、システムエラーで命を落としてしまった犬もいました。個人的には見ていると辛くなってしまうのですが、宇宙研究の進歩の一助を担ってくれたことに感謝したいですね。

宇宙に飛び立った犬達


 

まとめ

以前、モスクワの宇宙飛行士博物館もご紹介しましたが、規模が大きく、記念日がある4月ともなると学校単位ですごい数の人々が訪れるので、かなりの混雑だったイメージがあります。

ガガーリン市は小さな町だけに、全体的にほのぼのとした60周年記念日という印象ですが、ロシア国内はもちろん、ガガーリンに縁があるガガーリン市にとって大切な歴史的な記念日であり、子供達の希望になっていることが伝わってきました。

こぢんまりとしたこの町を「この地にガガーリンが住んでいたんだなあ」などと、思いを馳せながら散策するのは、またひと味違う感慨深さがありますね。

後半では、そんな想いがより強く感じられる場所、ガガーリンや家族が過ごした家やおまけのグルメ情報も加えてお届けいたします。