昨年12月12日にイギリス生まれでスパイ小説の巨匠であったジョン・ル・カレが89歳でこの世を去った。この作家の大ファンであった私は少なからずショックを受けた。ただ彼が回想録(地下道の鳩)を出版した時点で死期が近いと感じた事を覚えている。イギリスとロシアは航空便で約4時間と非常に近い。ジョン・ル・カレの描くスパイは決して華やかではなく、ひっそりと人込みにまぎれ、人間の心の奥の密やかな欲望を炙り出す。かつてイギリスの諜報機関の上級職員であったキム・フィルビーがロシアの情報機関のダブルエージェントであった事が発覚。イギリスは大騒ぎになった。フィルビーはロシアに亡命。二度と祖国に戻らずモスクワで死去した。フィルビーはモスクワのクンツェヴォ墓地に埋葬された。この亡命事件のあとル・カレはティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイを刊行。(この作品は映画になり邦題は裏切りのサーカス)またグレアム・グリーンはヒューマン・ファクターを刊行。どちらの書籍もいかにヒューミントが大事かと気づかされる。昨今は何事もデジタル化で効率第一が良しの風潮であるが人の心はデジタルだけではわからない。今後かれのような作家は現れるのだろうか?