2021年5月8日(土)は、『世界渡り鳥の日』です。

世界渡り鳥の日

『世界渡り鳥の日』は、アフリカ・ユーラシア渡り性水鳥の保全に関する協定(AEWA)事務局と移動性野生動物の種の保全に関する条約(CMS;通称ボン条約)事務局が音頭を取って、2006年より毎年渡り鳥とその生息環境の保全を目的に行っている啓発キャンペーンです。

渡り鳥たちが渡りを行う春と秋の時期から、5月と10月の第2土曜日に開催されています。

日本で見られる野鳥は、

➀一年中その土地に留まっている、『留鳥』

➁その土地に春に来て夏を過ごす、『夏鳥』


➂その土地に秋に来て冬を過ごす、『冬鳥』


➃渡りの途中で日本を通過していく、『旅鳥』


➄台風や悪天候などの影響で迷い込んだ、『迷鳥』


などに分けられます。
中でも➁~➃に分類される鳥たちのことを一般的に渡り鳥と呼んでいます。
なかには、北極圏のツンドラ地帯と南極周辺海域を移動するキョクアジサシや、オーストラリアから北太平洋を右に回りしてまたオーストラリアに戻るハシボソミズナギドリの様な約32,000kmも飛行する強者もいます。

マガン

ジョウビタキ

日本に飛来する渡り鳥は、ロシア・シベリアより渡ってくるものが多く存在しています。
また、学名をニッポニア・ニッポンとして日本の象徴ともされるトキは、かつてはユーラシア大陸東部にて渡りをしていたと考えられています。

ロシア・シベリアからの渡り鳥たち

・マガモ
・オナガガモ
・ユリカモメ
・コクガン
・カリガネ
・オオハクチョウ
・ツグミ
・カシラダカ
・オオヒシクイ
・ジョウビタキ
・マナヅル
・オオワシ
・ムナグロ
・アオシギ
・タゲリ
・ヒシクイ
・マガン ほか

 

コクガンの渡りを研究されている方の、ロシアに調査に行かれた際の記録がありますので、ご紹介いたします。

《雁の道を越えて ~ロシア北極圏探訪記》澤祐介氏
https://note.com/saway1217/m/m9eba23a56bb2

日本文化と渡り鳥

さて、とりわけ日本ではチドリなどの仲間を“千鳥”として古くから親しんできました。
万葉集や古今和歌集には千鳥を題材とした歌が詠まれていますし、松尾芭蕉や正岡子規の俳句にも季語として登場しています。
身近なものでは千鳥柄や千鳥饅頭が挙げられますし、お笑いコンビ“千鳥”の由来も、千鳥を校章としている岡山県立笠岡高校からきています。

千鳥柄

今でも親しまれている千鳥ですが、種によっては生息環境の激変などによって急速に個体数を減らしていて、絶滅の恐れがあるレッドデータブックに記載されています。
その一方で、渡り鳥を保護するボン条約には、日本、そしてロシアも調印をいまだしていません。
日本に関していえば、条約がクジラやウミガメ、サメ類も保護の対象としているのがその理由とされており、代わりに1973年に当時ソ連であったロシアと『日露渡り鳥等保護条約』を締結しています。

皆さんが目にしている鳥たちは、はるばるロシア・シベリアから何千キロも飛来してきた渡り鳥かもしれません。
一人一人の意識を少しでも変えられたら、渡り鳥にとってより良い生息環境が守られる事でしょう。
今日は渡り鳥たちについて考えてみませんか?
 

『安房へ行き 相模へ帰り 小夜千鳥』  正岡子規