ロシアでは、正教のクリスマス(1月7日)も明けて、今週からようやく仕事始めです。このあいだの日曜日、ラジオでは、リスナーの皆さん、仕事開始の準備はできていますか?と呼びかけていましたね。と言っても、今年は新型コロナウィルスのために、どこで、どのように仕事始めを迎えるかは、人によって様々なようです。
さて、どのような時にも、ロシアの新年につきものの家庭料理といえば、「オリヴィエ・サラダ(салат “Оливье”)」が挙げられます。このオリヴィエ・サラダ、今では「毛皮を着たニシン(селедка под шубой)」と並んで、ロシア料理を代表する前菜のひとつとなっていますが、さて、この料理に冠せられている「オリヴィエ」とは、一体何のことでしょうか?
実は、このオリヴィエとは、このサラダを発明したリュシエン・オリヴィエの名前なのです。
リュシエン・オリヴィエは、1838年モスクワに生まれた、フランス系ロシア人でした。
成人した彼は、当時モスクワのトルーブナヤ広場にあったホテル「エルミタージュ」で働き始め、その後、このホテルの経営者となります。このホテルにあったレストランの名物料理となったのが、リュシエンの考案したサラダでした。
このサラダには、プロヴァンス風ソース(現在のマヨネーズの親戚にあたるソース)が使われ、その秘伝のレシピは、リュシエンは生涯オープンにすることがなかったとされます。
このシックなサラダは、当時の舌の肥えたモスクワのグルメたちの絶賛によって、あっという間にロシア中のシェフたちに広まることとなり、そのサラダは「オリヴィエ・サラダ」として愛されるようになったのでした。
というわけで、オリヴィエ・サラダは、そのネーミングこそフランス風ですが、実は正真正銘、モスクワ生まれのロシアの料理なのです。
今日、トルーブナヤ広場には、当時ホテル・エルミタージュだった建物が残され、劇場として使われています。