ロシアではウェイター、掃除人、電気技師、営業担当者などを一挙にこなす職業があります。
それは長距離列車の車掌です。
ロシア鉄道の場合、1つの客車に2人が乗車しており、交代制で働いています。
乗客から見ることのできる車掌の主な仕事として、乗車前の乗客のパスポートやチケットの確認、乗客の求めに応じた紅茶などのサービス、トイレや通路の掃除、目的地に着く30分前の乗客への声かけ、等々を挙げることができますが、他にも寝台の上段に重いマットレスを敷く、乗客全員分のシーツなどのリネン類を運ぶ、また冬に長く停車する駅では客車の車輪やレバー、足元のステップの雪や氷を取り除く肉体労働や、客室内やサモワール(給湯器)の温度管理といった電気系統の知識が必要な仕事、そして乗客データを厳密なレポートフォームに入力するといった集中力を要する仕事など乗客からあまり見えない部分で行われる仕事もたくさんあります。
数年前の夏、ハバロフスクからイルクーツクまで行く鉄道ツアーの添乗で、実際に車掌の仕事を目にする機会がありましたが、勤務中は本当に多忙な様子で、ツアー参加者から購入を頼まれた鉄道グッズを買いに車掌室を訪れたところ、日誌のような何かびっしりと文字の書かれたノートを見せられ「今、これを書かないといけないから30分後にまた来て」などと言われたこともありました(その時は「客より日誌が先なんかい!」とツッコミを入れたくなりましたが)。

私が乗車した列車の車掌たちは、1等車を除きほとんどが20代くらいに見えました。
鉄道の車掌は、キャリアによって(一部は高度なトレーニングが必要です)以下の電車に乗車できることになっています。
・郊外列車
・長距離列車
・ブランド列車(モスクワーサンクトペテルブルク間を走る夜行列車「グランドエクスプレス」など)と
 国際列車
・国際列車(外国語が話せること)
キャリアが上がれば上がるほど、より快適な労働条件とより高い賃金、そして美しい制服を着て働くことができます。
私が見た車掌たちは、ちょうどキャリアを積んでいるところかもしれません。