イコンのもとの意味はイメージで、ロシア正教会ではイエス・キリスト、聖人、天使、聖書の出来事が描かれた板絵をいいます。他にフレスコ画、写本挿絵、モザイクなど多様化しています。正教会においては、正教徒が祈り、口付けする聖なる対象とされています。信仰の対象はイコンに描かれた原像であり、正教徒がイコンの前で祈るとき、描かれたキリスト、生神女(聖母マリア)、聖人に祈ります。人はイコンを通じて霊の世界やそこに住む者に触れることが出来るようになります。
ロシアでは「ウラジーミルの生神女」など奇跡を起こすと伝えられるイコンが多く、多くの人が信仰しています。

「ウラジーミルの生神女」

聖ルカにより描かれ、1131年にコンスタンディヌーポリ総主教からキエフ大公ユーリー・ドルゴルーキーに贈られました。1395年ヴァシーリー1世はウラジーミルからこのイコンをモスクワに借り受け、イコンに夜通し祈り続けていると、翌日に敵軍は引き揚げるという奇蹟が起こり、モスクワはこのイコンのウラジーミルへの返還をせず、代わりに模写をウラジーミルへ贈り、イコン「ウラジーミルの生神女」はモスクワ・クレムリンにあるウスペンスキー大聖堂に納められました。1451年と1480年にも、タタールの大軍からモスクワが守られたのはこのイコンによるとも伝えられています。現在はトレチャコフ美術館所蔵となっています。